時計の針は五時をまわっていた。
 
 高嶺は一睡もしないまま、膝にノートパソコンを置いて窓の外を眺めていたが、思い立ったように立ち上がり、そのままベッドルームへと向かった。


「莉央」


 ドアを開けベッドに向けて声をかけたが返事はなかった。

 ベッドに腰を下ろして顔を覗き込むと同時に、反対側を向いていた莉央は寝返りを打ち、高嶺がベッドに突いた腕にコツンと頭をぶつけた。

 まっすぐで長い黒髪が、サラサラと白い頬にこぼれ落ちる。

 手を伸ばし、その髪を肩へと落とす。

 そして高嶺はそのまま吸い寄せられるように身を屈め、莉央の涙が残るまぶたに口付けていた。

 顔を離し、また莉央をじっと見つめる。

 キスをしても起きる気配はない。
 彼女は静かに眠っている。