(黒に少し青みがかって、キラキラしてる……。ああ、なんてきれい……。意地も悪いし紳士じゃない、私の人生を滅茶苦茶にした男なのに……なんできれいな目をしているんだろう。)


 莉央は不思議になりながら……いや、これは自分が弱っているからだと考え直し目を閉じる。


(この男は私の敵……。)


「少し、休みます……」
「えっ? あ、ああ……」


 なぜか高嶺が動揺して声を震わせたような気がしたのだが、莉央はそのまま深い眠りに落ちていった。


 莉央はそのとき忘れていたのだ。
 観察する目で対象を見ることは、同時に自分をさらけ出すことだと。

 恐ろしく、悪魔的に頭のいい高嶺が、そんな莉央の目を見て、何も感じないはずがないのだと……。