(なんせ全く懐かない猫だしな。)

 莉央の寝間着のボタンを全て留めたあと、水を飲ませリビングへと向かう。


「なんだ、案外簡単じゃないか」


(莉央が目を覚ましたら、せいぜい大変だったと恩を売ってやろう。)

 高嶺はクスッと笑い、台所でインスタントコーヒーを入れ、リビングのソファでノートパソコンを立ち上げ、膝に乗せた。


 静かな夜である。

 高嶺の長い指がキーボードの上を踊るように動く、その音だけが部屋の中に響いている。

 肩のあたりにこわばりを感じて、手を止め首を回していると、どこから遠くからすすり泣くような声が聞こえた。


「ん……?」