医者の手前わかったと言ってしまったが、家庭的能力に欠ける高嶺の思考は止まってしまう。

 なにしろ高嶺自身まったく食に興味がない。彼の体の半分はシリアルで出来ているレベルである。天宮には人としてきちんとした生活を送れといつも叱られているくらいだ。

(こういう時は翔平だな。『消化が良くて滋養のあるものってなんだ』っと……。)

 医者を見送ったあと、メッセージだけ送って、高嶺の莉央の寝顔に目を落とした。

(今日はやけに白いなと、なんとなく思ってたんだよな……。)

 キングサイズのベッドの端に腰掛け、莉央を見つめる。

 顔色はだいぶマシになったが、額に汗がにじんでいる。

(拭いたほうがいいな……。)

 立ち上がり、濡れたタオルをきつく絞って莉央の顔や首を拭く。
 そうやって莉央の体を清めながら、高嶺の胸に、なんとも後味の悪いモヤモヤしたものが広がっていく。

 だが今の高嶺にその感覚に名前をつけることは出来なかった。