「着いたぞ」
タクシーがタワーマンションの前に停車した。慌ててタクシーを降りたが、目の前にズドンと立っているマンションがあまりにも大きすぎて開いた口がふさがらない。
(高い……。何階建てなの? 三十くらい?)
莉央の住む町は建物の高さ制限があるため、こんなに高いマンションは立っていない。
(いったいどんな人が住んでいるんだろう……って、そうか。高嶺のような人が住んでるのよね……。)
「莉央、行くぞ」
(だから呼び捨てるなって言ってるのに!)
ぼうっと空を見上げていた莉央は、声をかけられて慌ててまた高嶺の後を追った。
連れて行かれた部屋は二十四階の角部屋だった。
外部に接した二面がガラス窓になっていて、よく磨き上げられた床と夜景がキラキラと光っている。リビング部分がかなり広い。
「二LDKで、あっちがゲスト用。毎週掃除に入ってもらってるから気兼ねなく使えよ」
「はい」
(ああ、気分が悪い。吐きそう……。)
「莉央?」
「……だか、ら……」
(莉央って呼び捨て、しないでよ……。)
「莉央!」
莉央の視界は一瞬にして真っ暗になった。