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残りの日程のホテルのキャンセル手続きを終えると、
「終わったか」
高嶺が莉央の足元からスーツケース二つを引き寄せた。
「自分で運べます」
「そうか。じゃあ代わりに俺の荷物頼む」
「あっ!」
彼は持っていたタブレットケースを莉央に押し付け、両手にスーツケースを引いてホテルの玄関へ一人でスタスタと歩いていく。
(本当に自分のことしか考えていない勝手な男……!)
慌てて莉央もその背中を追った。
果たして彼に部屋を借りることがいいことなのか、迷いが出てくる。
タクシーに乗り込み、当然のように隣にいる高嶺の存在が重くてたまらなかった。