高嶺はゆっくり、両手をポケットに両手を突っ込み、終始ピリピリした様子の莉央の顔を覗き込んだ。
「莉央」
「だから、気安く、」
「社員の手前、そう呼ばせてもらう。それにな、昨日といい今日といい、アポイントメントもとらずにいきなりやってくるなんて常識知らずもいいところだぞ。社員はみんな君に興味津々で、何しに来たんだと騒いでる。ここで離婚届出しに来たなんて知られてみろ。うちの会社の評判にもかかわるし、社内の雰囲気が乱れる」
「それは……いきなり来たのは謝りますけど、仕方ないじゃない。連絡先も知らないんだもの」
「じゃあ、教えとくから今度から連絡しろ」
「は?」
ポカンとする莉央をよそに、高嶺はスマホを取り出し「番号は?」と尋ねる。
「えっと……自分の番号……?」
持っていたバッグからスマホを取り出し、じっと見つめる。