けれど設楽はそんなことはどうでもいいと言わんばかりに、焦る莉央の言葉を一刀両断する。


「私はその実力がないものに夢を見せたりはしません。常々惜しいと思っていたのです。ただ、それだけですよ」
「先生……」


 目の奥がじんわりと熱くなる。

(先生は私に絵を教えてくれただけじゃなくて、居場所も作ってくれようとしている……。)


「そうですね……あなたは忙しいでしょうから私が結城家に連絡しておきましょう」
「……はい」


 どう考えても忙しいのは設楽の方なのだが、気を使ってくれているのだろう。

 半ば夢見心地で、莉央はうなずいた。