時計の針は深夜の三時半を指していた。
高嶺の腕の中で莉央は後ろから抱きかかえられ、ぐっすりと眠っている。
眠る莉央があまりにも美しいから、生きているのかと何度も口元に耳を寄せ、息を確かめずにはいられなかった。
そしてそのたびに、白い頰にかかる黒髪をはらい、涙の跡が残るまぶたにキスをする。
ここにいるのは人形じゃない。生身の人間の莉央だ。
こんなに激しい気持ちで、誰か一人のことを思ったのは、父親を憎むこと以外では初めてだった。
父親を憎むあまり、莉央の人生を狂わせた。
そして莉央を思うあまり、俺はまた誰かを傷つけたりはしないだろうか。そして莉央を悲しませることはないだろうか。
不安な気持ちが胸をよぎる。