「そのお金は元はあなたが自分を売ったお金ではないのですか」
「っ……」


 【借りる】という言葉が設楽の気に障ったのだ。

 だが莉央が困ったように微笑むと、設楽は髪をかきあげたうつむいた。


「ああ、莉央。すみません。あなたを傷つけるつもりはなかった。私が悪かった。すみません……」


 謝罪の言葉に莉央は首を振る。


「ご心配おかけして申し訳ありません。自分でも無謀なのだとはわかっています。だけど頑張りたいんです」


 おそらく実家でも散々反対されたに違いない。
 それでも莉央の言葉は揺らぎない。

 設楽は仕方ないと諦めたのか、アプローチを変えた。


「わかりました、莉央。美術商(ギャラリスト)を紹介しましょう。今までは難しい立場にいたからそんなことも言えなかったけれど、あなたにはその力がある。これからは一人前の画家として、生きていくことをえらぶのです」
「ええっ!?」