悩みに悩んで、とりあえず彼の正面へと回り込み、肩まで湯に浸かった。


「いいお湯ね」
「……ああ」


 静かな夜である。


「ね、見て。月、きれい」


 莉央があげた指先の向こうに月がある。

 月を見上げて、それから高嶺を見つめた。


「莉央」


 その瞬間、高嶺が莉央に手を伸ばしながら、こっちにやってくる。
 あっと思った瞬間、そのまま彼の腕の中に抱き寄せられてしまった。

 ちゃぷん、とお湯が揺れる。
 顔を上げると同時に唇が奪われていた。