個展の間は当然一滴も飲んでいなかったが、もともと莉央はアルコールは嫌いでないらしい。
スッと立ち上がり、テーブルを挟んだ高嶺の隣に座った。
「正智さん、どうぞ」
「ん、ありがとう」
莉央に酌をしてもらうと、なんだかおままごとのようだと思わないでもないが、かすかに頬を染めてニコニコしている莉央が可愛くて仕方ないので、オッケーということにする高嶺である。
「莉央」
両手を伸ばして彼女の肩を抱き寄せる。おとなしくもたれてくる、莉央のあご先を指で持ち上げ口づけた。
莉央の、伏せた長いまつげの先がかすかに震えている。
「莉央……」
重ねた唇を外して名前を呼ぶと、莉央の大きな瞳が真っ直ぐに見返してくる。
なんと美しい瞳だろうと高嶺は思う。