昼食を取っていなかった二人は、早めに夕食をとった。


「美味しいものを少しずつって最高の贅沢ね。ごちそうさまでした」
「目にも綺麗だったな」
「うん。本当に」


 海のもの、山のもの、すべてがモダンな食器に品良く乗せられて運ばれてくるのを見て、莉央は途中スケッチブックを出し、写生してしまったほどだ。


(いきなり連れてきたが、それなりに楽しんでいるようでよかった。)


 莉央は女将に勧められた日本酒を飲みながら、庭に視線を向けている。

 日が落ちて淡くライトアップされた庭はなかなか風情があったが、高嶺の目を引くのは美しい庭でもなんでもなく、ただ莉央一人だけだ。


「莉央、そんなに飲んで大丈夫か?」
「大丈夫よ。私わりといけるクチなんだから」