「いらっしゃいませ」


 和服姿の女将に出迎えられ、通された部屋はこの旅館で四つしかないという離れである。


「わぁ……」


 木の香りがふんわりと香る贅沢な部屋だ。駆け寄った窓の外には緑が目に眩しい、この部屋のための日本庭園が広がっている。


(後でこの庭を描いてみようかな……。)


 個展が終わったばかりだというのに、ついそんなことを考えてしまう莉央である。

 そうやって美しい庭をうっとりと眺めていると、高嶺が後ろから莉央に近づき抱きしめる。


「源泉掛け流しの露天風呂付きだ。あとで一緒に入ろう」
「えっ!」


 今高嶺は一緒に、と言っただろうか。

 莉央は顔を真っ赤にさせて体を硬直させる。


「い、一緒にって、そんな……ほんとに?」
「もちろん。一緒に入るって決めてる」