「今日から一泊、北陸の温泉宿を予約した。行こう」
「えっ!?」
「頑張った莉央の慰労だ」


 莉央の目がまん丸になる。


(今から慰労で温泉? 温泉!?)


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 東京から越後湯沢まで新幹線で約一時間半。本当にあっという間に着いてしまった。

 高嶺の行動力には唖然とするばかりだ。


「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった……」


 しみじみとつぶやきながら莉央は周囲を見回す。

 もちろん春なので雪はないのだが、名著の舞台になったと思うと莉央も心がはずむ。


 幸い天気に恵まれ、空はどこまでも青く澄み切っている。

 タクシーに乗り込み、高嶺が予約したという老舗旅館へとチェックインしたのは午後三時だった。