それから三週間後。銀座銀嶺堂で莉央の個展が開かれた。
初日の今日は、入場制限がかけられたほどの盛況ぶりだった。
日本画家、結城莉央の誕生である。
「莉央さん、お疲れ様。設楽先生は、最終日に帰国してここに直接来るそうよ」
「はい。早く見ていただきたいです」
設楽は今個展でパリにいるのだ。
これからは一人の画家として自分の責任で筆をとるとはいえ、なにはともあれ、設楽なしではこの成功はありえなかった。
水森と話しながらも、キョロキョロと周囲を見回す。
「ご主人なら二階にいたわよ。それにしても個展初日に中に入りきれないほどのお花を妻に贈るなんて、なかなか素敵じゃない。一番のファンなのね」
「あ、はい……三週間分……というか……なんというか……」