高嶺は莉央の額にキスを落とし、それから今度は耳元に顔を寄せた。


「個展が終わったら覚悟しとけよ。溜め込んだ有給全部使ってしばらく莉央を独占する」
「えっ……!」


 重低音の囁きに甘美な色が乗って、莉央の心の中に音楽のように軽やかに響く。


(それってその、あれ?)


「顔、真っ赤」


 高嶺はくすりと笑ってまた頰を傾ける。莉央もつられるように目を閉じていた。


 二度目のキスは、触れるだけ。
 尊敬の念を込めたやさしいキス。


 莉央の心に温かいものが広がる。


 画を描こう。
 心に思い浮かぶこの景色を描こう。
 きっともう迷わない。