莉央の声の後ろに空港アナウンスを聞き取った高嶺が慌てたように問いかける。
「出発ロビーよ、でも人が多くて……!」
実際のところ、ロビーはかなり混雑していて、周囲を見回しても行き交う人の顔など区別がつかない。
この中から高嶺を探し出すのは難しそうだ。
莉央はぎゅっと拳を握り、それからスマホに頰を押し付けた。
「このままでいいから、聞いて。私、いま、生まれて初めて恋をしているの。こんな気持ち初めてなの。あなたのことを考えすぎて、塗りつぶされそうで、怖くて、子供みたいに逃げてしまった……! でもあなたのいない人生なんて、もう考えられないの! もう少ししたら、私ちゃんと大人になるわ。大人になって、もっと上手にあなたに恋できるようになるから、お願いします、まだ私のこと離さないで!」
「莉央!!!」
名前を呼ばれて、全身の血がたぎる。
声の聞こえた方を振り返ると、背の高い高嶺の顔が見えて、そして次の瞬間には、両腕で抱きすくめられていた。