莉央へ
十年間、君が俺にどんな気持ちを抱いていたかわかってる
だから胸の奥に抱えていた憎悪が愛に変わったとしても
それが全て消えて無くなるとは思っていない
それでもいい
俺は莉央のそばにいたい
莉央に与えられるものなら痛みでも構わない
それはこの十年間で俺が君につけた傷だから
けれどもし俺の存在が
莉央が画を描くことの枷になっているのなら
邪魔になりたくない
離婚届はすぐに出せる状態で
天宮に預かってもらっている
いつ出してくれてもいい
住まいの心配もしなくていい
あのマンションは莉央のものだ
高嶺の文章はそこで終わっていた。
だがよく見ると、さらに何かを書き付けたのか、メモの下はジグザグにちぎり取られていて、彼が迷いながらこの文章を書いたのだとわかる。