けれど設楽のとった行動は全くの真逆だった。


「しっかりなさい、行きますよ」


 腕時計に目を落とし時間を確認すると、しゃっくりあげ、それでもしどろもどろに話す莉央の手をつかみ、ドアの外へと向かう。


「せんせい……?」


 この選択を後悔する日は来るかもしれない。けれど結局自分は、長く莉央の先生であり過ぎたのだ。



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 設楽と乗り込んだタクシーの後部座席で、莉央は手の中のメモを開いた。

 ヨレヨレになってしまったそれを、膝の上に広げて、手のひらで伸ばす。