「三週間いないんですっ……」
「いないって?」
「お昼の飛行機……お昼に出て、シリコンバレー、お昼に着く感じなんだってっ……」
「シリコンバレー?」


 いつも冷静な莉央が支離滅裂なことを言っている。

 ただ前後の流れとこの状況から考えてみれば、高嶺はアメリカに出張のため三週間留守にするということはなんとなくわかる。


 設楽は完全な敗北感に打ちのめされながらも、「どうしよう」と泣く莉央を「やっぱり私にしなさい」と、横から奪うような気持ちにはなれなかった。

 男の長年の勘で、今の弱りきった莉央なら自分のものにできそうな気はしている。

 その先にたとえ未来はなくとも、一年か二年、莉央のそばにいられたらその思い出だけで死んでいけると思うくらいに、彼女を思っている。