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「ではお待ちしています」
『はい、先生。準備してから伺います』
莉央との電話を切り、設楽は十年前に自分が描いた絵を振り返る。
莉央に見せたいと思ったのは、設楽が最高傑作と自負している一枚の画である。
それは今の設楽の地位を確固たるものにした作品で、死ぬまで手元に置いておきたいと思っている作品だった。
電話の莉央の声は、かなり憔悴した様子だった。
個展の目玉になる新作がまだ出来ておらず、かなり意気消沈していると教えてくれたのは、水森だ。
(少しは力になれたら良いのだけれど……。)
莉央が高嶺と住んでいることを知っても、設楽の気持ちは何も変わらなかった。