きっかけは小さなヤキモチだ。
だが最近のすれ違いすれ違い生活が、すっかり莉央を怖じけつけさせてしまった。
もしかしたら高嶺は私を持て余しているのかもしれない。そんな考えが浮かんでくる。
だから、声をかけようと思った瞬間に喉が詰まる。
高嶺の後ろ姿を見るだけでドキドキして、胸が苦しくなる。
結果、何も言えなくて逃げてしまう。
唯一、本音でなんでも言いたいことを言える存在だった高嶺が、世界で一番遠い存在になってしまったような気がした。
(このまま話せなくなったらどうしよう……。いや、それどころか嫌われてしまったら?)
結局莉央は、面と向かって嫌われるくらいなら逃げたほうがマシと、間違った方に判断してしまったのだ。
(電話で謝る……? でも大事な仕事で出張に行くのに、邪魔しちゃ悪いよね……。)