喧嘩をしたらすぐに仲直りをしないと、人はこんなにも自分に壁を作ってしまうものなのか……。


 朝、高嶺が出勤していく音を部屋のドア越しに聞いて、莉央はベッドの中で深いため息をついた。


 結局何も話せないまま、とうとう、高嶺がシリコンバレーに出張する日を迎えてしまった。


 今日話をしなければ三週間会えずじまいである。

 だから絶対に今日こそ絶対に謝るのだと、朝食を作り待っていたのだが、個展の準備で体は疲れ切っていた。


 力尽きてカウンターにうつぶせになり、うたた寝していた莉央は、気付けば高嶺によってベッドに運ばれていた。


(どんな気持ちで私をベッドに運んでくれたんだろう……。ただの親切……とか?)


 待っているのと、自分から追いかけて声をかけるのは、断然待っているほうがハードルが低い。

 だから頑張ってキッチンにいたのに、この体たらくである。