「どこに行ってたの」
「ん?」
「女の人の匂いがする」


 莉央の声が若干低くなる。その声を聞いて、高嶺の全身から血の気が引いた。


「これは、あれだ。その、急に決まった接待で……」


 高嶺にしては珍しくしどろもどろだ。

 その様子に莉央はカーッと頭に血が上った。


(私はデートの方法に迷ってるレベルなのに、自分は仕事かもしれないけど夜遊び!)


 今更ながら、高嶺と女優の噂を思い出してしまった。

 脳裏に綺麗な女性にしなだれかかられる、典型的な絵面が浮かんだ。

 もちろん女優との噂は100パーセント嘘だったわけだが、テレビによると過去にかなり噂になった相手はいるらしい……。

 仕方ないとはいえ、彼はあまりにも大人で、住む世界が自分と違いすぎて、もどかしく、歯がゆくなる。