高嶺は申し訳なさそうに莉央の横に座り、髪を撫でた。
 ぼうっとしていた莉央だが、高嶺の言葉に一気に目が覚める。


「出張……」
「莉央の個展がなければ一緒に行ってもらうことも考えたんだが」
「うん……でも行けない……」


 三週間高嶺と離れる。
 想像するだけで胸の奥がキュッと締め付けられる。


「そんな顔するなよ……置いていけなくなるだろ」


 高嶺の唇が額に押し付けられる。同時に指が耳やうなじにかかる髪をかき分けて、流すようにすいていく。

 うっとりと身を任せていた莉央だが。

(この匂い……。)

 近づいた高嶺から微かにお酒とタバコ、そして香水の匂いがした。

 高嶺の胸に顔を寄せていた莉央は、両手をぐっと伸ばし高嶺を押し返す。