路線図を確認しながら私鉄に乗り、なんとか目的の港区元麻布のマンションへとたどり着いた。

 そこは五階建てのデザイン性の高いマンションで、床はタイル貼り、受付にコンシェルジェが立っている、かなりの高級マンションであった。

 自分の名前を名乗って、指定されたソファで待っていると、
「本当に莉央なのですか?」
と、焦ったような声がエントランスに響く。


 声のした方を振り返ると、着流し姿の、眼鏡をかけた、背の高い細身の壮年の男が慌てたように走ってくるのが見えた。


「設楽先生!」


 懐かしい顔に、莉央は立ち上がり駆け寄った。


「結城です。先生、お久しぶりです!」
「ああ、信じられません。本当にあなたなんですね?」


 設楽は何度か口をパクパクさせた後、ふと真顔になって
「ここではなんなので、アトリエに来なさい」
と、莉央をエレベーターに乗せる。