「日本画といえば普通は表装だけど、莉央さんの画の場合、額装もいいかなと思って。不思議よね。伝統的な日本画なのに違和感がないの。これって美人は何着ても似合うってのと一緒かしらね。はい、これチェックして」
「はい」


 渡されたファイルには莉央の画が綺麗に収められた写真が入っていた。

 そもそも設楽が見込んだ水森の目に間違いはない。逆にこういう見方もあるのかと、新鮮な思いがする。


「あの、水森さん。描きたいものがあるんですけどそれをどうしても形にできなくて」
「それはどうして? 莉央さんは設楽先生に徹底的に写生することを叩き込まれているでしょう」
「いつもはそうなんですけど……」


 いいよどむ莉央に、水森はピンときたようだ。


「頭の中にあるものを描きたいの?」
「そうなんです……。頭の中にははっきりとあるんです。輪郭も匂いも、手触りもわかるのに……」
「ふぅん……」