「シリコンバレーに出張?」
「そう。提携の件、いよいよ本決まりだよ。さすがにこれはCEOである君がいかないわけにはいかないから」
「わかった……ってこれ三週間かよ!」


 アメリカのシリコンバレーにあるIT企業との提携は、一年以上前から進めていたプロジェクトである。

 大きな仕事とわかっていたが、さすがに一ヶ月近く莉央と離れるというのはかなり抵抗があった。


「ちょうどいいでしょ、奥方様からちょっと離れて、高嶺はきちんと仕事をする。奥方様も仕事をする」
「きれいにまとめんな……」


 うんざりしながらも、さすがに今の莉央にアメリカまでついてきてくれと言えるはずもない。

 はからずとも個展が始まるまでは、二人は離れ離れになるわけである。


「……トンビに油揚げさらわれないように気をつけてね」
「ああ?」


 どこか楽しげな天宮の言葉に、ふと思い出した。
 税所羽澄どころではない、いわゆるラスボスの存在に。