「たぶん、何かを生み出そうとしてるんだ……。もがき苦しみながら、何時間も白い紙を見てるんだ。そのまま魂を吸われて死ぬんじゃないかって心配になるくらい……あんな風に全てを投げ出してる莉央に、『お前とセックスしたいからその手を止めて俺のベッドに来いよ』って言えるかってことだ」
「ああうん……無理だね。ごめん」


 親友の涙ぐましい努力はすでに笑える一線を超えた。
 本気で彼女のことを思うからこそ、己を律しているのだ。


「あ、でもこないだ、明け方寝ぼけて俺のベッドに入ってきたんだ。めちゃくちゃ可愛かったぞ。ここぞとばかりに抱きしめてやった」


 ちょっぴり自慢げな高嶺に天宮の同情は止まらない。


「マサ、自慢げに言わないで。俺マジで泣いちゃうから。しかも苦行が一周回ってご褒美になってるみたいだけとそれ普通に辛いから」


 しかし想像の真逆を突き進んでいた親友に、ある意味今回の話は助けになるかもしれない。

 天宮は持っていたファイルをテーブルの上に乗せた。


「これ、ラブラブ夫婦生活を邪魔しちゃ悪いかなって言いづらかったんだけど、逆にマサのためになるかも」
「どういうことだ」


 コーヒーでサンドイッチを流し込み、ファイルを開いた高嶺は、資料にざっと目を通して目を細めた。