そもそもこの話のきっかけは、高嶺の莉央溺愛トークにうんざりしていた天宮が、
「子供でもできたらまた酷い親バカになりそうでうんざりだね」
と、言ったせいである。
ちなみに高嶺の返答は「子供ができるようなことはしていない」だったので、コントのようにひっくり返りそうになった。
「順序立てて説明してよ。なんでそんなことになってるわけ?」
浮気疑惑から莉央を連れて帰った高嶺は、まさに逆転勝利をおさめたと言っても過言ではない。
なのになぜ相変わらず清らかな関係なのか、天宮は想像もつかない。
「まぁ、帰宅初日はやっぱり移動して疲れてるだろ。ぐっすり寝かせてやりたいと思うだろ」
「まぁね」
「で、次の日から莉央がいきなり本気モードになって、部屋の中から出てこなくなった」
「ああ……個展があるんだっけ」
「で、その状況が一週間続いて、そこらで莉央の昼夜が逆転し初めて、気がつけば完全にすれ違い生活というわけだ」
「わぁ……」
これ以上ない理路整然とした状況説明に、天宮の茶色い目に憐れみの色が混じった。