高嶺の形の良い後頭部に手を回し、髪の中に指を入れる。地肌を指でなぞると、莉央と同じシャンプーのはずなのに、違う、いい匂いがした。


「正智の匂い、好き……」
「……っ……」


 その瞬間、高嶺が少し苦しそうにうめいたかと思ったら、ガバッと飛び起きた。


「ど、どうしたの?」
「……あやうく、大人の分別というものを見失うところだった」
「分別って?」
「その……だから……莉央を最後まで抱きたくなった」
「……えっ」
「いや、だから、いくら何でもここじゃダメだ。莉央の実家だし、お母さんもいるし」
「う、うん……」


 急に我に返った莉央は、この陶酔の向こうにあるものはそういうことなのかと気恥ずかしくなる。