翌朝、簡単な朝食をルームサービスでとった後、一旦京都に戻る羽澄を東京駅まで見送ることになった。
「莉央お嬢様お一人で本当に大丈夫なのですか?」
新幹線のホームでも、まだそんな様子の羽澄に、莉央は笑って彼を見上げる。
「子供じゃないのよ、羽澄」
「もちろん存じてますよ。ですがおいくつになっても羽澄にとってお嬢様はお嬢様ですからね。一週間ほどでまた戻って参りますから、くれぐれもご注意くださいね」
「わかりました。ほら、そろそろ出るみたいよ。羽澄こそ気をつけて帰ってね」
名残惜しそうな羽澄を新幹線に押し込み、手を振る。座席に座った窓越しの羽澄は、身振り手振りで別れを惜しみ、悲壮感漂う表情で京都へと帰って行った。
(ふぅ……やっと一人になれた……。)
心配してくれる羽澄には悪いが、それが正直な思いだった。