莉央の体が緊張で強張る。だが高嶺は低い声でゆっくりと、莉央にささやいた。
「俺が急に来たから怖くなったんだろう? 大丈夫、俺は莉央が嫌がることは絶対にしないから……」
それから大きな手でよしよしと頭を撫でられる。
そうやってしばらく撫でられていると、あれほど暴れまわっていた心臓がようやく落ち着きを取り戻し始める。
「……ちょっと、落ち着いた」
「そうか。よかった」
若干の恥ずかしさからか、子供のようにかすかに唇を尖らせる莉央にクスリと笑った高嶺は、莉央の体の前で自分の手を握り、一緒に窓の外を眺めた。
「莉央は毎日この景色を見ていたんだな」
「うん」
「文化財にしなくても、俺なら残すことはできるぞ」
「ううん……いいの」
高嶺ならそう言ってくれるような気はしていたが、それは莉央の望みではなかった。