自分の部屋が気に入っている莉央は、単純に紹介するつもりだったのだが、
「ああ、そうだな」
「……っ!」
 彼の声が耳元で響いて、莉央は一瞬言葉を失ってしまった。


 想像よりずっと近くに高嶺は立っていた。

 莉央が見ているものを同じように見ようと、高嶺が背後に立っているせいだ。


「莉央?」
「あ、うん。なんでもない……」


 なんでもなくはないが、そんな風に誤魔化してしまう。

(これって、二人きりってこと? いや、お母さんはいるけど一階だし、遠いし……。いや、そもそも彼のマンションでずっと二人きりだったのに。なに今更緊張なんか……。)