お風呂を出て髪を乾かした後、ベッドに腰を下ろし窓から庭を眺めていると、部屋のドアがノックされる。


「莉央、俺だ」
「えっ!? 正智さんっ?」


 慌ててドアを開けると、風呂上がりの浴衣姿の高嶺が立っていた。

 湯上りのせいかうっすらと目元のあたりが赤い。それが妙に色っぽく莉央には映った。


「どうしたの?」


 ドキドキしながら問いかけると、高嶺は部屋の中を少し覗き込んで、
「莉央の部屋が見たかったんだ」
と笑う。

 確かに、行政との手続きが済めば、もうここは莉央の部屋ではなくなるのだ。


「よかったら見ていって」


 莉央は高嶺を部屋に招き入れて、ドアを閉めた。


「ここ、二階で一番庭が綺麗に見える部屋なの。ほら、月があの辺りにかかるとまるで一枚の絵みたいに見えるでしょう?」