その日、莉央と高嶺は結城家に滞在することになった。

 高嶺は客間、莉央は自分の部屋である。

 一応夫婦なのだが、そうでないとも言える。
 母や高嶺に何かを言われる前に、そう決めて高嶺を客間に押し込んだ。


 久しぶりに彩子の手作りの夕食を食べた。

 高嶺は口にした途端、
「莉央が料理上手なのはお母さん譲りですね」
と言って、母を大いに照れさせた。


(あの人、天然のタラシのような気がする……。)


 母相手にやきもちを焼いているわけではないが、高嶺との今後を考えると、なんだか複雑だ。