「結城家でなくても、年頃の娘がいて、没落しかけている家であればどこでもよかった。興信所に調べさせ、俺がこの家を選んだのは、藤原氏嫡流、摂家の男子直系で、父に対して箔がつくと思ったからです。結果、父は俺のプレゼンを……そう、プレゼンだった。俺のそんな提案を受けて『やってみろ』と笑って、俺に全財産を譲ったんだ! その財産で俺は新たな事業を展開、参入し、成功させた。自分の、目先の利益しか考えてこなかった。ここであなた達を苦しめていることなんか、気にも留めなかった。だから……結城の奥様と莉央さんには、どうお詫びしても言葉が足りない……」


 高嶺はそのまま上半身を折るようにして、頭をさげた。


「お嬢さんの人生を滅茶苦茶にしたのは、俺です。これが事実です。本当に申し訳ありませんでした」


 血を吐くような高嶺の告白を聞き、しん、と静まり返る奥座敷は時が止まったようだった。


「高嶺さん……」


 沈黙を破ったのは、彩子である。


「ご事情、わかりました。けれど私もあなたに謝ってもらえるような人間ではないのです」


 彩子は呆然と高嶺を見つめている娘に視線を向ける。