正座した高嶺の膝の上で、ギュッと握り締められる拳は、微かに震えていた。
とっさに莉央は手を伸ばし、その甲に手のひらを重ねる。
怒りに心をとらわれそうになる高嶺に、自分はここにいると、安心させたかったのだ。
高嶺はふっと表情を緩め、莉央に頷くとまた言葉を続ける。
「俺は考えました。なんとかして、父に参ったと言わせたいと……そして思いついたのが、誰とも知らない相手との契約結婚でした」
高嶺の喉が、ゴクリと鳴った。
「多くの愛人を抱えて、意味もなく子供を作り、財産ばかり増やしたあいつの真逆をいってやろうと思った。たった一人、無関係の女と結婚して、意味もなく別居して、あいつの財産をどんどん減らしてやろうと思ったんです」
高嶺の切れ長の眉に深くシワが寄る。
そして彼は座布団から降り、畳の上に手をついた。