高嶺の口から聞かされる彼の身の上は、莉央が想像していたものとは全く違っていた。


「けれど十年前、老齢の父の病が悪化したとき、全国に散らばっていた子どもたちが、初めて本家に集められました。腹違いの兄妹たち、全員で五人です。正妻はすでに死去しており、後継はいませんでした。残された子供たち全員が愛人の子でした」


 そこで高嶺は一息ついて、唇を噛み締める。

 彼の苦悩に満ちた目の理由がそこにあると、莉央は感じた。


「……病床の父は言いました。【お前たちの中で、一番私を驚かせてくれたものに、すべてを譲る】と」
「えっ……?」
「父からの宣戦布告でした。ゲームです。あの男にとって、子供などただの暇つぶし。巨万の富も、地獄には持っていけない、遊び道具でしかなかった……。その時俺は生まれて初めて怒りを覚えました。愛人の子供と近所で陰口を叩かれたって、馬鹿らしいと取り合わなかった俺が、父に初めて、憎しみを覚えた……俺はただ、それまで父のことを考えないようにしていただけだったんです」