(俺も絶対、いつか莉央と風呂に入る!)
「どうしたの?」
「なんでもない……。行こうか」
高嶺は莉央に駆け寄り、それから彼女の手を繋ぎ門をくぐる。門は東向き、母屋は南面して建つ書院造りである。堂々とした屋敷だった。
莉央は二十六年間ここで過ごしてきた。
まもなく結城家の手を離れると思うと、また感慨深く、いつもと景色が違って見えた。
「たか……正智さん、母とどんな話をしたの?」
名前を呼ぶのも恥ずかしい莉央だが、高嶺はそんな莉央をまぶしそうに見つめうなずく。
「莉央に会わせて欲しいと話したら、多分税所家にいると教えてくれた。塩を撒かれても仕方ないと思っていたんだが、いきなり押しかけた俺にもお母さんは親切だったな」
「そう……」