羽澄の運転で、莉央と高嶺は結城家に向かった。
後部座席に並んで座ったのだが、いつの間にか莉央の手は高嶺にごく自然に握り締められていた。
その温もりをありがたく思いながら、莉央は深呼吸を繰り返す。
(自分の家に帰るのに緊張するってどうしてだろう……。)
まもなくして結城家の正門の前に、静かに車が停まる。
「ありがとう、羽澄。じゃあ行ってくるね」
「はい、お嬢様」
できるだけ明るい声を出し車を降りる莉央を、羽澄は優しく見送った。
そしてそのまま莉央の後を追おうとした高嶺に、バックミラー越しに冷めた視線を送る。
「お待ちください。僕はあなたを認めたわけではないので、そこをお忘れなく。それと、あなたは十年前のことを莉央様に明らかにするべきだと思いますよ」