そして加寿美はパシパシと羽澄の背中を叩く。
「お嬢様は少しこのままで。高嶺。お前には言いたいことがたくさんある」
「羽澄……」
羽澄はふうっと息を吐き、高嶺を見据えたまま、莉央を抱き寄せた。
高嶺はその瞬間、莉央を抱き寄せた羽澄を敵として認定した。
「今日の午後三時にうちの広報から正式に発表がある。女優とは会ったこともないし、無関係だ」
羽澄から莉央を自分の方に抱き寄せる。
そして誰にも渡さないと言わんばかりに、莉央の体を両腕でしっかり抱きしめた。
「おおっ……仁義なき男の闘いっ!」
加寿美は若干テンションを上げるが、莉央は気が気ではない。
いくら気心知れた羽澄と加寿美の前とはいえ、人前だし、恥ずかしいし、なんだか変な空気だ。