高嶺は莉央の髪を指で梳きながら答えるが、まさかの返答に莉央は飛び上がりそうになった。
「えっ!? 話したの!?」
「ああ。また結城家に行くから、一緒に行ってくれるか」
「もちろんよ。私も今日は帰るつもりだったし」
まさか高嶺が実家で母と話したとは思わなかったが、よくよく考えてみれば莉央が帰るところは実家しかありえない。
高嶺の来訪を母はどう思っただろうかと、少し気になった。
「お嬢様っ!」
「莉央ちゃんっ!!!」
そこへ血相を変えて飛び込んできた二人がいた。羽澄とその兄の加寿美(かずみ)である。
加寿美は羽澄の三つ上の兄で、どこかほんわかした優しい雰囲気を持つ、美しい青年だった。羽澄同様スーツを着ている。おそらく仕事中だったのだろう。
高嶺と、涙に濡れた莉央を見比べた羽澄は、顔色を変え、きつく拳を握りしめた。