屋上を転がったせいでヨレヨレになった二人は、お互いの洋服のゴミを手のひらで払いながら見つめ合う。

 高嶺の眼差しはあたたかく美しかった。

(やっぱり私、いつかこの人を描いてみたいかも……。)

 心の奥からふつふつと沸き起こる甘い気持ちに、悲しいわけでもないのに泣きたくなる。



「莉央、どうした?」


 そんな変化を感じ取ったのか、高嶺が目を細めて顔を覗き込む。

 切ないという気持ちを言葉にできる気がしなくて、莉央は微笑んだ。


「ううん、なんでもないの。それよりあなたスーツだけど、何か撮影でもあったの?」
「いや……莉央が実家にいると思ったから、スーツで来た。で、お母さんとちょっとだけ話した」