人の迷惑を顧みず、世間一般の常識を軽々と飛び越えて度肝を抜く。とんだ俺様で、迷惑極まりない。

 けれど……。


「馬鹿よ、本当に……あんなこと、してっ……」


 気が抜けたのか、今度は安堵の涙がこぼれる。


「莉央。とりあえず今日の昼の分。愛してる」
「バカッ……もうっ……怖いもの知らずにもほどがあるでしょっ!」
「明日が怖くて恋ができるか。そんな気分だ」


 高嶺は莉央の腰の後ろに両手を回し、ぎゅっと組むと、おでこをコツンと触れ合わせ目を閉じる。


「莉央……会えてよかった」
「……私も」
「ん?」
「私も……そう思う」


 もう他に言うことはなかった。そのまま高嶺の胸に体を預け目を閉じる。

 この時莉央は、唇を重ねなくても、目を見なくても、高嶺と深い所で繋がったような気がしたのだ。