そのまま足を一歩でも踏み出せば、真っ逆さまに落ちてしまうだろう。どうしてそんなことをするのだ。
 背筋がゾッとした。


「高嶺さんっ!」


 驚いて駆け寄ろうとすると、高嶺は肩越しに振り返って軽く首を横に振る。


「莉央。お前が死ねというなら死んでやる」
「なっ……なに、言ってるの!?」


 自分はついさっき、この男に信用できないと、酷いことを言ったのに。一人の方がマシだと拒絶したのに。なぜそんなことをするのかわからない。


「明日が信じられないというのなら、俺は今日も明日もお前に誓う。目が覚めて、夜眠るまでの間も、夢の中でも、お前を愛していると、自分の命よりも大事だと誓う。だからその証に、今日、お前が死ねというならここから飛び降りて死んで見せる」


 そして高嶺は、ゆっくりと莉央に向き合った。