この機会にと契約したのだが全く使いこなせていない莉央である。
「感覚で押せるって言ってたけど……あ、できたっ!」
呼び出し始めたのに気づいて、慌てて耳に押し当てる。
『結城でございます』
「お母さん、莉央です」
『ああ莉央。よかったわ。さっき羽澄から電話があったのよ』
「本当? じゃあ話は聞いてるのね」
『ええ……』
感慨深い様子で、電話の向こうの母は息を漏らす。
『頑張りましたね』
「ありがとう」
『それと……その、一人暮らしの件だけど、本当に? 気持ちは変わらないのですか?』
「お母さんごめんなさい。だけど私、もう二十六になるのよ」
『そうだけれど、やっぱり心配だもの。しかも東京だなんて……』
「大丈夫ですって。きっとなんとかなるわ」