「あの報道は全部嘘だ」
「うそ……写真もあるのに」


 絞り出した声は震えていた。


「あれは別のIT関係の社長。俺じゃない。それに写真を撮られたあのマンションは、去年俺が住んでたところ。IT関係とか年齢や年恰好が近いせいで、たぶん俺と間違われたんだと思う」
「……」


(全部うそ? でも……。)


 無言で高嶺を見つめる莉央の頭の中は大混乱だ。
 だが高嶺はそれが怖いようで、腕をつかんでいた手を離し、肩をつかんで顔を近づける。


「莉央、すまない。報道されると聞いてすぐに説明するべきだった。俺が無神経だった。こんなにお前を傷つけるとは思わなかった」
「……」
「頼む、なんとか言ってくれないか……頼むから……」


 高嶺は、七階分走ってきた疲れがドッと来たのか、ずるずるとその場に崩れ膝をついた。