キョロキョロと見回すとドアがある。
ドアノブを回すとザアッと強い風が吹き込んできた。そこは屋上だった。
行き止まりだけれど、もう後戻りはできない。そのままフラフラと何歩か歩いたところで、後ろから腕をつかまれた。
「莉央……っ」
つかまれた腕が熱い。
振り返ると、ゼェゼェと、肩で息をしている高嶺と視線がぶつかった。
もしかして七階まで走ってきたのだろうか。
エレベーターで上がってきた自分とそう変わらない速さでここまで駆け上がってくるとは、思わなかった。
「……留守電、全部聞いたか?」
全部は聞いていない。
たがら首を振った。
それでもたった一つだけ聞いた『どこにも行かないでくれ』という声だけ、強く莉央の中で響いている。